土壌汚染に強い弁護士トップ > FAQ > 瑕疵の発見について > 新築建物付きの土地を購入したところ、土地の境界付近にコンクリートガラ等の産業廃棄物が埋設されていることが判明しました。今は生活する上で支障はないのですが、売主に除去費用を請求しておくことはできるのでしょうか。
請求できる場合があります。
購入した土地に地中埋設物や土壌汚染が存在することにより土地に隠れた瑕疵があると判断される場合には、買主は、一定の期間制限の下、売主に対し、瑕疵担保責任に基づいて地中埋設物・土壌汚染の除去費用・浄化費用等について損害賠償請求をすることができます。地中埋設物・土壌汚染が隠れた瑕疵があると判断されることを前提とすれば、これらを実際に除去・浄化していなくても、これらが土地に存在することによって、買主としては、地中埋設物・土壌汚染の除去費用・浄化費用等相当額の損害を被っているとして損害賠償請求をすることができるのです。
ただし、土壌汚染と異なり、地中埋設物は、掘削されれば産業廃棄物等として特別の処理費用を要するけれども、土地に埋まっているだけでは何の問題も無いのだから、現に買主が除去した部分だけが土地の瑕疵にあたるという主張や、仮に将来建築される可能性のある建物を考慮するとしても、土地の建ぺい率及び容積率によって制限される平面的範囲内に存在する地中埋設物のみが土地の瑕疵となるという主張がなされることがあります。
このような主張に対し、近年の裁判例は、除去未了であっても、土地の平面的範囲に存在する全ての地中埋設物について土地の瑕疵に認める傾向にあります。具体的には、名古屋地判平成17年8月26日判時1928号98頁及び東京地判平成20年7月8日判タ1292号192頁が参考になります。
まず、名古屋地判平成17年8月26日判時1928号98頁は、買主が、売主より土地を8000万3960円で購入したところ、同土地に、陶磁器くず、窯跡及び建物基礎等の地中埋設物が存在していることが判明し、買主は、費用と工事期間の制限があったため建物敷地部分の一部に限ってこれらを除去したという事案です。この事案において、売主は、買主は一部の地中埋設物を除去することによって建物を建築し、土地の買受けの目的を達成しているのだから地中埋設物全体を処理する必要性はないと主張しましたが、裁判所は、売主に、除去未了の地中埋設物の除去にかかる費用を含め643万5000円の賠償義務を認めました。
また、東京地判平成20年7月8日判タ1292号192頁は、買主は、売主より土地と建物を10億8854万7661円で購入しましたが、その後、同土地において土壌汚染や地中埋設物の存在が判明した事案です。買主は、土地の建ぺい率及び容積率によって制限される平面的範囲内に存在する地中埋設物のみが土地の瑕疵となる旨主張したのですが、裁判所は、土地の全ての平面的範囲内に存在する地中埋設物が土地の瑕疵にあたると判断して、これらの調査及び対策工事費用5億6970万5850円の賠償義務を認めました。
もっとも、土地の全ての平面的範囲内に存在する地中埋設物が土地の瑕疵にあたる可能性があるとしても、実際に掘削してみなければ、その正確な数量や除去費用は確定しません。掘削未了のまま損害賠償請求をする場合には、裁判所は、実際に掘削され、発見された地中埋設物の状況から、他の土地に存在する地中埋設物の数量を推測して除去費用相当額を試算することになるものと思われます。名古屋地判平成17年8月26日判時1928号98頁においても、同様の手法が採用されております。
ただし、以下の裁判例のように、地中埋設物の内容が買主にとって有益なものであったり、埋設量が軽微であったりする場合には、土地の瑕疵に該当しないと判断されることもありますので、必ずしも売主の瑕疵担保責任を問えるわけではないということにご注意ください。
裁判例 | 地中埋設物 | 土地の瑕疵にあたらないと判断した主な理由 |
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東京地判 平成22年4月 8日 ウエストロー・ジャパン |
コンクリート製の構造物 | 地中埋設物が存在する範囲はごくわずかであるし、建物の増改築や建替えの際に構造物が支障となり得ることを過大視するのは相当でないこと。 |
東京地判 平成21年6月 15日 ウエストロー・ジャパン |
水道管 | 買主側が、地中埋設物の一部を再利用していること等。 |
東京地判 平成15年12月 1日 新日本法規 |
直径約30cm、長さ約8mの地下杭30本 | 土地の地中に杭を打設するのはその土地上に建築される建物の不等沈下等を防止するためであり、地下杭の存在は有益であること。 |
なお、買主は、瑕疵の存在を理由として土地の売主の瑕疵担保責任を追求する場合、以下の期間制限に服することになりますのでご注意ください。
仮に、期間制限を経過してしまった等の理由で売主の瑕疵担保責任を追及できない場合には、買主としては、売主の説明義務違反や浄化義務違反・除去義務違反を主張して除去費用の賠償を求めることができる場合があります。