土壌汚染に強い弁護士トップ > 過去の裁判例 > 売主の瑕疵担保責任を否定した裁判例 > 損害賠償請求権の保全を否定する等して瑕疵担保責任の除斥期間の経過を認めた事例
土地の売主に対して損害賠償請求をする場合、一定の場合には土地引渡し後6か月以内に土壌汚染や地中埋設物を発見しなければならず(検査通知義務)、また、土壌汚染や地中埋設物の発見から1年以内に損害賠償請求をしなければならない(除斥期間)等の期間制限があります。また、買主としては、除斥期間の経過により権利が消滅しないように売主に対して損害賠償請求を行う場合、損害賠償請求権の発生原因となる瑕疵(土壌汚染や地中埋設物)の内容を明確にして損害賠償請求権を特定するとともに、請求する損害額を算定根拠とともに明示する等の方法により損害賠償請求を明確にしなければなりません。
以下の事例では、除斥期間を土地引渡後2年とする旨売買契約において合意されておりましたが、当該除斥期間の経過により、買主の売主に対する瑕疵担保責任等に基づく請求はすべて棄却されました。このように、買主としては、上記の各期間制限に違反した場合、売主に対する多額の請求権が消滅してしまうおそれがありますのでご注意ください。
裁判例 | 東京地判平成25年5月28日TKC |
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事案の概要 | Aは、Bらより土地を9億円で購入した。その際に締結した売買契約には、買主は、本件土地に隠れた瑕疵がある場合には、売主に対し、損害賠償請求をすることができるものの、当該請求については、本件土地の引渡後2年を経過したときはすることができないとの規定があった。その後、同土地において、地中埋設物及び土壌汚染の存在が判明した。そこで、Aは、Bらに対し、瑕疵担保責任に基づき各6137万9245円の損害の賠償等を求めた。 |
判決の概要 | 瑕疵担保による損害賠償請求権を保存するためには、除斥期間(本件では本件土地の引渡後2年)内に、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はないと解される。売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げたとして損害賠償請求権の保全が認められるためには、瑕疵担保に基づく損害賠償請求権の発生原因となる瑕疵の内容を明確にして損害賠償請求権を特定するとともに、請求する損害額を算定根拠とともに明示する等の方法により損害賠償請求を明確にする必要があるとして、本件では損害賠償請求権が保全されたと認めることはできないと判断し、Aの請求を棄却した。 |