土壌汚染に強い弁護士トップ > 過去の裁判例 > 売主の説明義務違反を認めた裁判例 > 地中における排水槽及び浄化槽の存在に関し説明義務違反を認め200万円の賠償義務を認めた事例
説明義務は、契約締結の過程において、売主となろうとする者が、買主となろうとする者に対して負担する義務です。
以下の事例のように、土地の売主が、売買契約を締結するにあたって、売買対象となる土地の地中に産業廃棄物などの地中埋設物が埋設されていたり、あるいは土壌が汚染されている可能性を認識しながら、その点を、買主に対して何ら告知・説明しなかった場合、当該土地売主は、説明義務を怠ったものとして、土地の売買契約締結後に存在が判明した地中埋設物や土壌汚染の除去費用等について賠償義務を負う可能性があります。
とりわけ、売主が企業である場合、売買契約締結交渉担当者が地中埋設物又は土壌汚染の存在を隠蔽するつもりがなくとも、従業員間の引き継ぎ等のコミュニケーション不足等の理由により、意図せず説明義務違反に陥ってしまうことが往々にしてあります。そのため、土地の売買契約締結の際には、自社が同土地に関して認識している情報を十分に洗い出しておく作業が必須となります。
説明義務違反の法律構成は、契約関係にない者の間の義務に違反したものとして不法行為とする構成のほか、売買契約における付随義務とみて債務不履行責任と構成されることもあります。
説明義務違反による損害賠償を不法行為と構成するときは、買主が損害を知った時を起算点として、3年経過すると時効消滅します。また、債務不履行責任として構成する場合は、商行為によって生じた債権に該当するならば、商事消滅時効の5年、これに該当しない一般の民法上の債権ならば、民法の原則どおり10年の消滅時効にかかることになります。
他方、瑕疵担保責任と異なり、説明義務違反に基づき損害賠償請求をする場合には、買主には、土地引渡し後6か月以内に瑕疵の原因となる土壌汚染や地中埋設物を発見し売主に通知する義務(買主の検査通知義務)は課せられませんし、土壌汚染や地中埋設物の発見から1年間の期間制限もありません。
裁判例 | 東京地判平成25年1月21日ウエストロー・ジャパン |
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事案の概要 | A(医療用機械器具製造業等を目的とする株式会社)は、B(不動産の仲介・売買等を目的とする株式会社)から買い受けた土地からがれき類などの地中埋設物が出てきてその撤去費用の支出を余儀なくされたと主張し、Bに対しては瑕疵担保責任ないし債務不履行(説明義務違反)に基づき、本件土地の売買を媒介したCに対しては債務不履行(説明義務違反・調査義務違反)に基づき、本件土地の前々主であるDに対しては不法行為に基づき、それぞれ撤去費用相当額の支払を求めた。 |
判決の概要 | Bの瑕疵担保責任については、除斥期間の経過により認められなかった。もっとも、Bは、Dから地中埋設物のうち浄化槽、排水槽が埋設されている可能性を伝えられていたにもかかわらず、本件売買契約時にはAにこれらの情報を伝えず、その結果、Aは、浄化槽及び排水槽が本件土地に埋設されていることを認識しないまま本件売買契約を締結したのであるから、Bは、排水槽及び浄化槽が埋設されている可能性があることを買主であるAに説明する義務を怠ったものとして、200万円の賠償義務を認めた。 Cは、本件土地にがれき類が埋設されていることを認識し得る状況にあったとはいえないとして、Cの説明義務違反・調査義務違反は否定された。 さらに、Dは、Bに対し、地中埋設物のうち浄化槽、排水槽が埋設されている可能性を伝えており、その他の地中埋設物の存在についてはDが埋設したものではないとしてDの不法行為責任は否定された。 |