土壌汚染に強い弁護士トップ > 土壌汚染・地中埋設物の基礎知識 > 土壌汚染問題とは > 「うちの土地は大丈夫」は通用しない土壌汚染問題の恐ろしさ
「うちの土地で有害物質は使用していないからうちの土地だけは大丈夫」といって土壌汚染問題を軽く考えているととんでもない目に遭うかもしれません。
実は、土壌汚染対策法により規制されている有害物質の中には、鉛やヒ素等、自然界に存在するものも多く存在し、土壌汚染が自然由来であるケースもあるのです。つまり、売買対象となった土地上で一切有害物質を取り扱ったことがなかったとしても、土壌汚染調査をすれば有害物質が検出されるリスクはあるということです。
現行法の下では、自然由来の有害物質による土壌汚染も土壌汚染対策法の適用対象ですので、仮に、土地売買後、買主側が実施した土壌汚染調査によって土壌汚染対策法施行規則所定の基準値を超過する自然由来の有害物質が検出されれば、これらは土地の瑕疵にあたると判断され、土地売主は瑕疵担保責任等に基づいて賠償義務を負わされる可能性が高いのです。
また、気をつけなければならないのは土壌汚染対策法により規制されている有害物質だけではありません。
土地を工場用地等として利用している場合、有害物質を利用することはなくても、土地上で油分を利用するケースは多いのではないでしょうか。
油分による土壌汚染については、環境基準その他の法令上の基準は定められておりませんが、国の諮問機関である中央環境審議会によって「油汚染対策ガイドライン‐鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対応の考え方‐」がとりまとめられておりますし、水質汚濁防止法3条1項及び3項による排出基準では、鉱油類は2~5mg/l以下とされ、また、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条1項4号に規定する油分を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令1条1号による海洋投棄基準では、油分の溶出量15mg/l以下とする等の規制が存在し、油分の濃度や量によっては、土地売主は瑕疵担保責任等に基づいて賠償義務を負います(東京地判平成21年3月19日ウエストロー・ジャパン、東京地判平成18年11月28日ウエストロー・ジャパン、東京地判平成22年3月26日ウエストロー・ジャパン)。
さらには、土地売主自らがその土地上で有害物質や油分を利用したことがないとしても、その土地の元所有者等の第三者が土地上で有害物質や油分を利用した可能性もないと言い切れるでしょうか。あるいは、隣地の所有者が使用した有害物質や油分が境界を越えて染み出していないと言い切れるでしょうか。
土地売主は、仮に汚染原因者が自分ではなかったとしても、欠陥のある土地を売りつけたとして賠償義務を負う可能性もあるのです(瑕疵担保責任)。
このように考えると、工場用地等の売買においては、土壌汚染リスクを考えなくて良いケースなどほとんどないということがよく分かると思います。そして、売却した土地に土壌汚染があると判明した場合に売主が負担する賠償義務は、多額となることが多く、億単位の賠償義務が課せられることも珍しくありません。実際に、土地売却後にダイオキシン類、PCB、六価クロム、フッ素及びホウ素を含む土壌汚染等の存在が判明した事案では土地売主に5億6970万5850円の賠償義務が課せられ(東京地判平成20年7月8日判タ1292号192頁)、同様にヒ素などの土壌汚染の存在が判明した事案では土地売主に3億162万3657円の賠償義務が課せられ(東京地判平成19年9月27日ウエストロー・ジャパン)ております。
にもかかわらず、土壌汚染に関する法的リスクの手当を何も行わないまま、安易に工場用地等の土地売買契約を締結することは、自社の事業に致命的な悪影響を及ぼしうる法的リスクを丸抱えするに等しい行為だといえます。