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土壌汚染浄化義務・地中埋設物除去義務を規定する?

通常の取引の際、土地の売主には、土地に土壌汚染や地中埋設物が存在するか否かについて、土地を掘削する等の調査を行う義務までは課されておりません(東京地判平成25年3月28日ウエストロー・ジャパン等)。土地を売却した後に土壌汚染や地中埋設物が発見された場合には、その費用を賠償するという形で瑕疵担保責任を負担することにはなりますが、土壌汚染や地中埋設物を売却前に除去しておくことは義務ではないのが原則です。

そこで、土地の売主に土壌汚染浄化義務・地中埋設物除去義務を課したい場合は、売買契約書に明記する必要があります。近年、土壌汚染・地中埋設物への社会的な関心の高まりに応じて、このような条項が設けられるケースが増えてきています。

土壌汚染浄化義務・地中埋設物除去義務は、説明義務と異なり、土壌汚染を浄化し、あるいは、地中埋設物を除去することそのものを契約上の義務と捉える考え方であり、買主に対し、土壌汚染・地中埋設物が存在することや土壌汚染浄化工事・地中埋設物除去工事を行ったこと等を説明しても免責されないと思われます。

また、土壌汚染浄化義務違反に基づき土地売主に損害賠償を求める場合は、債務不履行責任によることになりますから、商行為によって生じた債権に該当するならば、商事消滅時効の5年、これに該当しない一般の民法上の債権ならば、民法の原則どおり10年の消滅時効にかかることになります。さらに、瑕疵担保責任と異なり、買主には、土地引渡し後6か月以内に瑕疵の原因となる土壌汚染を発見し売主に通知する義務(買主の検査通知義務)は課せられませんし、土壌汚染の発見から1年間の期間制限もありません。

土壌汚染浄化義務・地中埋設物除去義務の恐ろしいところは、売主の立場としては、これらの義務を履行することは容易ではないということです。

すなわち、土壌汚染調査や地中埋設物調査は、対象地の土壌粒子を網羅的に検査するものではありませんから、完璧なものではありません。

一般に土壌汚染対策法で定められた調査であれば、相当程度の確率で汚染を明らかにしてくれると思われますが、それでも、実務家の間では80%くらいの確率ではないかと言われることもあるようです(小澤英明『土壌汚染対策法と民事責任』(2014年、白揚社)232頁)。

いくら土地を売却する前に多額の資金を投じて土壌汚染・地中埋設物の浄化工事・除去工事を行ったとしても、土地引渡し後に再度土壌汚染・地中埋設物の存在が発覚すれば、売主は汚染浄化義務違反・地中埋設物除去義務違反となり、再度浄化工事費用・除去工事費用を負担しなければならない可能性が生じます。

この場合、売主としては、事前の土壌汚染調査・浄化工事に要した費用に加えて予想外の賠償義務を背負わせられることになります。一般に土壌汚染調査・浄化工事費用は高額であり、規模によっては、億単位の金額を要することもありますので、このような賠償義務を負担されることによって自社の事業に致命的な悪影響が生じる可能性もあります。

このように、土壌汚染浄化義務・地中埋設物除去義務が認められると売主にとっては非常に過酷な義務が課されることになります。

したがいまして、土壌汚染浄化義務・地中埋設物除去義務を土地の売主が負担するような条項は、買主の立場としては是非合意しておきたい条項ですが、売主の立場としては、できる限り合意しておきたくない条項といえます。

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