土壌汚染に強い弁護士トップ > 土壌汚染・地中埋設物の基礎知識 > 土地売主の説明義務とは > 説明義務と瑕疵担保責任との違い
説明義務は、契約締結の過程において、売主となろうとする者が、買主となろうとする者に対して負担する義務です。
不動産取引において、引渡し後の土地の地中から地中埋設物や土壌汚染が発見された場合において、瑕疵担保責任に基づく主張に次いで買主側からなされることが多い主張が売主の説明義務違反に基づく主張です。
典型的な事案としては、土地の売主が、売買契約を締結するにあたって、自ら過去に産業廃棄物などの地中埋設物を埋設し、あるいは土壌を汚染しておきながら、その点を、買主に対して何も告知・説明しなかった場合等に土地売主の説明義務違反が認められ、売主には地中埋設物や土壌汚染の除去費用・浄化費用等について賠償義務が課されることになります。
売主の瑕疵担保責任は、売主に過失がなくても認められる責任ですので、地中埋設物や土壌汚染の存在について売主に何の原因がなくても認められてしまいます。他方、説明義務違反については、売主自ら地中埋設物や土壌汚染の原因を作り、あるいは原因を作っていなくとも売却前に地中埋設物や土壌汚染の存在を認識していたにもかかわらず買主に何らの説明をしない等、売主に何らかの過失がなければ認められませんので、この点において、買主側にとっては、瑕疵担保責任に基づく主張よりもハードルが高い主張といえます。実際に、裁判例においても、瑕疵担保責任に基づく主張と比較して、圧倒的に認められるケースは少ないです。
しかし、説明義務違反に基づく主張は、瑕疵担保責任に基づく主張と比較し、期間制限の点で圧倒的に買主側にとってメリットがあります。
まず、説明義務違反の法律構成は、契約関係にない者の間の義務に違反したものとして不法行為とする構成のほか、売買契約における付随義務とみて債務不履行責任と構成されることもあります。
説明義務違反による損害賠償を不法行為と構成するときは、買主が損害を知った時を起算点として、3年経過すると時効消滅します。また、債務不履行責任として構成する場合は、商行為によって生じた債権に該当するならば、商事消滅時効の5年、これに該当しない一般の民法上の債権ならば、民法の原則どおり10年の消滅時効にかかることになります。
他方、瑕疵担保責任と異なり、説明義務違反に基づき損害賠償請求をする場合には、買主には、商人間の売買であっても、土地引渡し後6か月以内に瑕疵の原因となる土壌汚染や地中埋設物を発見し売主に通知する義務(買主の検査通知義務)は課せられませんし、土壌汚染や地中埋設物の発見から1年間の期間制限(除斥期間)もありません。
そのため、買主は、たとえば土地引渡し後6か月を経過し、また、土壌汚染・地中埋設物の発見から1年間の経過等の事情によって売主の瑕疵担保責任を追及できなくなってしまった場合には、売主の説明義務違反に基づく主張をすることが有効な手段となることがあるのです。
さらに、瑕疵担保責任は、土地売主の土地買主に対する責任ですが、説明義務違反については、契約関係にない者の間の義務に違反したものとして不法行為とする構成によることができますので、汚染原因者など、直接の契約当事者ではない者に対しても主張できる場合があります(東京地判平成20年6月23日ウエストロー・ジャパン)。
主張 | 検査通知義務 | 除斥期間 | 時効 | 第三者への請求 |
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瑕疵担保責任 | 土地引渡し後6か月(商人間の売買の場合) | 瑕疵発見から1年 | 引渡し後10年(商事の場合は争いあり) | 不可 |
説明義務違反 (債務不履行) |
なし | なし | 権利行使可能時から10年(商事の場合は5年) | |
説明義務違反 (不法行為) |
不法行為時から20年 | 損害・加害者を知ってから3年 | 可 |