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「隠れた」瑕疵でなければならない

買主が売主に対して瑕疵担保責任に基づき損害賠償請求をするには、瑕疵が「隠れた瑕疵」でなければなりません。「隠れた」とは、以下の二つを意味します。

  • ① 瑕疵が表見しておらず、一般人の見地から容易に発見できないこと(大判昭和5年4月16日民集9巻376頁)
  • ② 買主が当該瑕疵につき善意・無過失である、すなわち、買主が当該瑕疵を知らず、かつ、知り得ないこと(大判大正13年6月23日民集3巻339頁)

つまり、瑕疵が「隠れた」ものといえるためには、一般人の目から見ても買主の目から見ても瑕疵の存在を知りようがなかったという場合である必要があります。一般に、地中埋設物は地中に埋まっていますし、有害物質の有無は検査をしなければ分かりませんから、地中埋設物や土壌汚染は「隠れた」ものといえるのが通常です。

しかし、土地の地表を見れば瑕疵の存在が分かってしまうような場合や、売主から交付を受けた書類、たとえば、重要事項説明書や土壌汚染調査報告書等の各種報告書等に、土壌汚染や地中埋設物が存在する旨の記載があるような場合は、「隠れた瑕疵」はないということになりますから、買主が売主に瑕疵担保責任に基づいて損害賠償請求をすることはできなくなります。このような場合、買主は、売主に対して、瑕疵担保責任以外の方法により責任を追及することを検討しなければなりません。

裁判例においても、以下の事案において、「隠れた瑕疵」該当性が否定されています。

裁判例 瑕疵の種類 事案の内容
東京地判平成23年1月27日
判タ 1365号124頁①事件
油分 買主が、土地の一部に「揮発性の高い油臭あり。」などと記載された報告書の情報等について第三者を通じて認識していた事案
東京地判平成22年 8月30日
ウエストロー・ジャパン
基礎杭 買主に、全体杭置図及び基礎杭が残置されていること等が記載された重要事項説明書が交付された事案
東京地判平成22年 3月26日
ウエストロー・ジャパン
油分 買主は、土地の一部の地表から68mg/kgないし1900mg/kgの濃度のTPH(油分)が検出されていることを知っていた事案
東京地判平成20年5月29日
ウエストロー・ジャパン
冷蔵倉庫の基礎と考えられる大量の発泡スチロールや土間コンクリート 買主による物件の内覧の際に売主の管理部長が土地上の建物の用途を「冷蔵庫ではないかと思う」と説明した事案
東京地判平成20年9月24日
ウエストロー・ジャパン
ガラやごみ等 買主(不動産業者)が本件土地上に窯業・土石製品製造業の工場が存在していたことを認識しており、また、地質調査報告書添付の現場写真から地中に埋まっているガラやごみ等の存在を看守し得た事案
東京地判平成19年 8月28日
ウエストロー・ジャパン
鉛及びその化合物 買主が土壌汚染問題の存在の可能性を示唆する内容の報告書を受領していた事案

以上から、買主としては、地表の状況の確認や売主側から交付を受けた書類の確認は必須といえます。

しかし、買主は、それ以上に、土壌汚染や地中埋設物の存在を前提として、本格的な土壌汚染調査や地中埋設物調査を実施することまでは必須とはいえません。

東京地判平成24年12月13日ウエストロー・ジャパンでは、大手不動産業者が買主となった事案、つまり、買主が不動産取引のプロであった事案においてさえ、買主に土壌汚染や地中埋設物の存在を想定した調査を行なう義務まではないと述べられております。

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