土壌汚染に強い弁護士トップ > 土壌汚染・地中埋設物の基礎知識 > 地中埋設物問題とは > 地中埋設物をめぐる民事上の責任について
土壌汚染と異なり、地中埋設物は、それ自体、人の健康に被害を与えるものではなく、地中に埋設されたままであれば、日常生活を送る上で格別の支障が生じるような存在ではありません。
しかし、例えば、購入した土地に大量のコンクリートガラ等の産業廃棄物が埋設されているような場合においては、土地の買主としては、将来建物を建築したり、増改築したりする場合に、地盤改良工事を行なったり、産業廃棄物を撤去するために費用を負担しなければなりません。
売買契約締結時には、このような地中埋設物がないものとして土地の売買代金の合意をしているのが通常でしょうから、土地の買主としては、不測の事態といえるでしょう。
そこで、一般に、裁判例においては、宅地の売買において、地中に土以外の異物が存在する場合一般が、直ちに土地の瑕疵を構成するとはいえないが、その土地上に建物を建築するにあたり支障となる質・量の異物が地中に存するために、その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を越える特別の異物撤去工事等を必要とする場合には、土地の瑕疵になると述べられており(東京地判平成4年10月28日判タ831号159頁、東京地判平成10年11月26日判時1682号60頁、東京地判平成14年9月27日ウエストロー・ジャパン、札幌地判平成17年4月22日判タ1203号189頁等)、このような場合には、売主は瑕疵担保責任に基づき除去費用等の損害賠償義務を負担する可能性があります。
もっとも、以下の裁判例のように、地中埋設物の内容が買主にとって有益なものであったり、埋設量が軽微であったりする場合には、土地の瑕疵に該当しないと判断されることもあります。
裁判例 | 地中埋設物 | 土地の瑕疵にあたらないと判断した主な理由 |
---|---|---|
東京地判 平成22年 4月 8日 ウエストロー・ジャパン |
コンクリート製の構造物 | 地中埋設物が存在する範囲はごくわずかであるし、建物の増改築や建替えの際に構造物が支障となり得ることを過大視するのは相当でないこと。 |
東京地判 平成21年6月 15日 ウエストロー・ジャパン |
水道管 | 買主側が、地中埋設物の一部を再利用していること等。 |
東京地判 平成15年12月 1日 新日本法規 |
直径約30cm、長さ約8mの地下杭30本 | 土地の地中に杭を打設するのはその土地上に建築される建物の不等沈下等を防止するためであり、地下杭の存在は有益であること。 |
このように、購入した土地の地中から地中埋設物が発見された場合であっても必ずしも売主の瑕疵担保責任を問えるわけではありません。
なお、時効等の問題から瑕疵担保責任を問えないような場合においては、土地の売主の説明義務違反や地中埋設物除去義務違反を主張して損害の賠償を求める方法も有り得ます。